人狼知能

人狼知能とは

人狼知能とは,若年層に人気の「人狼ゲーム」をプレイするAIのことです.人狼ゲームは,AIが人間を凌駕したとされる将棋や囲碁のような「完全情報ゲーム」とは異なり,麻雀や大貧民のように他のプレイヤーに非公開の情報がある「不完全情報ゲーム」です.人狼ゲームでの非公開情報は,そのプレイヤーが持つ特殊能力や勝利条件で,「役職」と呼ばれます.さらに人狼ゲームは,会話のみでゲームが進行する「コミュニケーションゲーム」という側面も備えている,AIにとっては非常に難しいゲームです.

大槻研究室と人狼知能プロジェクト

人狼ゲームを,これからのゲームAIの標準問題として提案し,複数の大学・企業の研究者がプロジェクトを組んで研究を推進しているのが「人狼知能プロジェクト」で,大槻研究室もこのプロジェクトに参加しており,人狼知能プラットフォームの開発や人狼知能国際大会の運営を担当しています.

人狼知能の研究は面白い

人狼知能の研究は,単に強いゲームAIを作るだけに収まらず,人あるいは他のAIを騙したり説得したりするAI技術,あるいは人を楽しませるような行動をとるAI技術など,近い将来AIに求められるであろう「社会的知能」の実現に必要な研究テーマの宝庫です.

研究例

ここでは,深層学習を用いて強い人狼知能を目指す研究を紹介します.人狼ゲームでは,いかに他のプレイヤーの役職を推定するかが勝敗を左右します.そこで,ゲームログと呼ばれる過去のゲームの記録を特徴量に変換し,それをディープニューラルネットワークで学習しました.学習によって得られた役職推定器の推定精度は,ほとんどの役職で約90パーセントを達成しました.この役職推定器を用いる人狼知能エージェントを作成して,人狼知能国際大会にエントリーしたところ,惜しくも優勝は逃したものの,初の決勝進出で第2位という好成績を収めました.特に,特殊能力を持たない「村人」という役職での勝率が参加チーム中でトップになったことは,この役職推定器の威力を物語っていると言えます.